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聴覚障害者が劇場で公演を楽しめるサポートが進みつつある。観客にセリフなどを字幕で表示する機材を配布するもので、まだ限定的ではあるが複数の劇場でサービスが始まっている。
宝塚歌劇団などで試験導入
宝塚歌劇団は2020年夏以降、東京宝塚劇場(千代田区)と宝塚大劇場(兵庫・宝塚市)で開催する公演で、聴覚障害がある観客に向けて、試験的に字幕を表示するタブレットの配布を行っている。事前に観劇日などを連絡した上で貸出が可能であれば対応を受けられる。
梅田芸術劇場(大阪市)でも、2021年2月の宝塚歌劇花組公演で同様のサービスを行っているが、こちらも試験的なもので、確実に貸し出せるものでもないという。梅田芸術劇場は「問い合わせいただいたお客様にご提供しておりますが、著作権の処理などで対応できない公演もありますし、当劇場の全ての公演で対応できるものでもありません。今後のあり方も未定です」と2月10日のJ-CASTニュースの取材に答えた。
国立劇場(東京・千代田区)や新国立劇場(東京・渋谷区)が主催する一部公演でも「ポータブル字幕機」の名称でガイド機材を聴覚障害者に貸し出している。ただしすべての公演ではなく、一部の公演で、かつ「観劇サポート公演」とされている日程に限られる。
国立、新国立両劇場などに機材を提供しているメーカーに、イヤホンガイド(東京・中央区)がある。もともと東京・歌舞伎座での歌舞伎公演で難解なセリフの解説や、外国人観客への対応として音声ガイドを提供しており、それを応用して2009年頃から歌舞伎公演で聴覚障害者向けの機材貸出サービスも始めた、と取材に答えた。同社では現在、東京芸術劇場(豊島区)や新国立劇場などでの公演に機材を提供しており、地方の公共劇場でも申し出に応じて提供してきた。
また、劇団四季ではタブレットではなくメガネ型のディスプレイに多言語で字幕を表示できるサービスを2018年から一部主催公演で始めており、聴覚障害者や訪日外国人も観劇を楽しめる。聴覚障害があったり言語が分からなかったりする人がが舞台を楽しめる取組みが徐々にではあるが演劇界で広がっている。
出典:J-CASTニュース
https://www.j-cast.com/2021/02/13404872.html?p=all
コラム
聴覚障がい者を字幕でサポートということですが、外国人対応のメインとしては英語、その他言語字幕が可能であれば、もちろん多くの外国人のお客様にも楽しんでいただける為、訪日外国人にとっては旅の目的がさらに広がります。なぜならば、インバウンド観光は自然・景観・食文化だけではなく、地元との交流や繋がりそしてエンタメを含んだ現地文化を体感することも十分な観光資源と言えるからです。
日本人も例えばニューヨークへ行けばブロードウェイミュージカルを観劇してみたい、パリであれば美術館巡りをしたいなど”現地の本場を一度は味わってみたい”という気持ちがあるのではないでしょうか。現に、ブロードウェイではオーディオトランス、パリの美術館ではオーディオガイドがレンタル可能です。
歌舞伎座はいち早く音声ガイド(同時解説イヤホンガイド)を取り入れていることで、訪日外国人だけではなく、障がいを持った方や一見敷居が高いと思う歌舞伎初心者の日本人にも優しい取組となっています。
理解できる言語でガイドがあると無いとでは楽しみ方がまるで違い、その後の日本観光の仕方にも違いが出てくるかもしれません。新たなファンが増えるだけではなく、劇中に出てきた場所を訪れてみたい、食べ物を実食したいなど新たな発見も増え、次のプランを決めるきっかけづくりになる可能性もあります。
そういった観点からノンバーバル・ノンボーダーで楽しめる観劇が増えることは、日本人と外国人間でのコミュニケーションも増え、通常では知り得なかった情報などをフックに一層訪日外国人の旅目的が細分化され、インバウンド観光に奥行きと広がりを見いだせる多大な可能性をもった取組と言えます。