【特集】インタビュー

株式会社しいたけクリエイティブ 代表取締役 本郷誠哉さんインタビュー ~『世界を大きくして、小さくする』 世界コミュニケーション~

株式会社しいたけクリエイティブ代表取締役本郷誠哉さん インタビュー本郷さん写真 腕を組み笑顔の髭の男性

今回【エの輪】の特集「インバウンド業界インタビュー」第3回目のゲストとして快くインタビューに応じてくださいました、制作会社の株式会社しいたけクリエイティブの代表取締役本郷誠哉さん。コロナ禍での創業から約半年、現状のリアルと取り組み、そして様々な課題やインバウンド業界への期待や希望を力強く語って下さました。
インタビューアー:カイトマウリ

 しいたけクリエイティブとは?

カイトマウリ:御社はしいたけクリエイティブという社名の通り、クリエイティブ事業がメインかと存じますが、事業について教えてください。

本郷さん:世界専門の制作会社とうたっているのですが、海外向けのコミュニケーションをカタチにしていく会社です。具体的には、英語での記事コンテンツ、動画、ウェブデザイン、ポスターのデザイン、冊子制作や出版をしています。

基本的には海外向けで、私たちが得意としていることは英語圏向けのデザインなどです。デザインや様々なクリエイティブを通じて文化の通訳者のような体を成して制作活動をしていくというのが一般的な事業内容です。

カイトマウリ:現在は、クリエイティブのお仕事をされていますが、本郷さんがクリエイティブの仕事をしたいと思ったきっかけを教えてください。

本郷さん:アメリカの大学を卒業して日本に帰国後、商社に就職しました。大変勉強になったのですが、正直あまり面白味を感じませんでした。その時に海外の友人から電子タバコが流行っているから起業してみないか?と誘われてアメリカで起業したんです。そこで初めて自分でウェブを製作したりマーケティングのコピーを考えたりしたのですが、全然うまくいかなくって、結局その仕事はやめてしまったのですが、ただその時に、広告とかマーケティングとか面白いなって感じたんです。広告やマーケティングを自分の強みを活かせる環境でやってみたいと思ってジープラスメディアという国内の英字媒体を運営している会社に入社しました。そこからこの業界に入ってきた感じです。

カイトマウリ:そうなんですね。現在の事業、しいたけクリエイティブの創設したきっかけというのはどういったことからですか?

本郷さん:そうですね、もともと国内の最大級と言われている英字メディアを運営する2社で自治体や企業の外国人向けプロモーションに関わる仕事をしていました。どちらの企業も様々な形で日本の観光推進には大いに貢献しているのですが、私が仕事をするなかで抱いていた課題感というか・・・これでいいのかな?という疑問を感じていることに気づきました。

それが何かというと、ある程度できあがったものをプロモーションするメディアという立ち位置では、限界がある気がしてしまって。あとは、メディアに属しているとそのメディアしか使えないというのがあるので、そういった意味でも「最善の提案ができているのか?」と思って、一旦メディアをやめようと決めました。その課題感の解決には、自分たちで企画段階のところから入って、制作、プロモーションをしていかないと意味がないと思って自分たちで会社を始めました。

簡単に言うと、メディアにいると、広告主さんからこういったものが出来ました!それをPRしてくださいという流れになるので。でも、その広告する対象が良いものでないと実際どんなメディアを使用してもどうしようもないと思い、もっと上流から入っていきたいと思って企画やクリエイティブから携わるために起業しました。

カイトマウリ:根本から作るという感じですね。

本郷さん:はい。そうですね。

カイトマウリ:しいたけクリエイティブさんという名前を初めて聞いた時、なぜ「しいたけ」なのかな?と思ったのですが、社名の由来についてお聞かせください。

本郷さん:そうですよね。これが、いつも聞かれてどうやって説明しようかなと思っているんですが、由来は2つあります。1つ目は、自分たちがやる事業ってどんなことかなと考えて、例えば文化だったりコミュニティだったり、変化だったり、どれもCulture, Community, Changeなど『C』がつく言葉ばかりだったんですね。コミュニケーション(Communication)とかもそうですし。なので『C』を『Take』して『Creative』にしていくというちょっとした語呂合わせなんです。ただ、説明してもポカンとされることが多いんです。2つ目は、学生の時にスペイン語を専攻していたのですが、私の「ホンゴウ」という苗字はスペイン語で「キノコ」という意味なんです。なので、日本語だと代表するキノコは「しいたけ」だし、社名にしてもいいかなと。今では「ホンゴウ」はスペイン語で「キノコ」なので「しいたけ」にしました。と言っています(笑)。

カイトマウリ:なるほど~そうなんですね!!てっきり、しいたけは胞子がいろんなところに飛んで派生して広がる?という感じかな?と勝手に想像していました(笑)。

本郷さん:あ~でもそうそうそう、そうなんですよ。それもいいなということも含めてなんです(笑)。
どんどんどんどん、自分たちの世界観を繁殖させていくみたいなイメージもあります。

領収書をお願いするとき、「えっ東京でしいたけ栽培してるんですか?!」と言われることもあります(笑)。
一度認識してもらえると、そのあとは“しいたけさん”と言ってもらえるので良かったなと思います。

カイトマウリ:なるほど、バラエティ豊かな由来ですね。日本人にも親しみがあるキノコ「しいたけ」だからこそ社名から一気にフレンドリーになるところも素敵ですね。

グローバルリーダーとして

カイトマウリ:そんなフレンドリーな社名の社長さんである本郷さんはご自身をどんなリーダーだと思いますか?またはどんなリーダーでありたいですか?

本郷さん:仲間はどう思っているか分からないですけど、基本的に周りから言われるのは「うるさい」と言われます(笑)。社内に日本人が私だけなので、色んな情報を自分なりに解釈してそれをみんなに伝えるということが多いですね。どういうリーダーかというと、自分はプロデューサーという立場なので、実際に手を動かしてモノを制作するのはライティングであればアリーに任せて、デザインとか写真や動画であればデイビッドに任せるという形になっているので、自分がトップダウンで決めるというよりは、周りの力を最大に発揮できるように調整をしながら進めていくというリーダーであるべきだろうなとは思っています。

カイトマウリ:社長として業務されている中で、日頃から心掛けていることもスタッフさんが動きやすい環境づくりをされているというわけですね?

本郷さん:そうですね。ある程度は任せるんですけど、大方針としては考えて、それをみんなで共通方針を持って進めるようにしています。

同志との出会い

カイトマウリ:なるほど。今、アリーさんとデイビッドさんという名前が挙がりましたが仲間との出会いについて教えてください。

しいたけクリエイティブさん3名のお写真左:デイビッドさん 中:本郷さん 右:アリーさん(しいたけクリエイティブさんより提供)

本郷さん:出会いは、ジープラスメディアにいたときに二人と出会い、一緒に働いた仲間ですね。そのあともENGAWAに移った後も3名で一緒に仕事をしていました。

カイトマウリ:そうなんですね。3人共ずっと一緒にお仕事をされていたその頃から何となくいつかは3人で・・・みたいな気持ちもあったのでしょうか? 長い年数一緒にやられているという状況ですか?

本郷さん:そうですね。5年くらいですかね。

カイトマウリ:となると、お互いのスキルやノウハウなど勝手が分かる状況でお仕事もとてもスムーズに進められているのではないでしょうか?

本郷さん:そうですね。性格とかそういったこともお互い理解してるので。正直に言い合えたりしますね。

カイトマウリ:正直に言い合えることはとても大切ですよね。
外国人と共に仕事している中で日本人としての感覚と違って、ギャップなどを感じたりすることはありますか?

本郷さん:どうですかね。自分も海外が長かったのであまり無いと思いますが、お互いのプロフェッショナル的な部分で、例えばアリーなんかはライターとしての意見がありますし、そういった部分ではあるかと思いますが、感覚やギャップなどは特に無いですね。

制作への信念と課題

カイトマウリ:先ほど少しクリエイティブについてお話頂きましたが、制作作業において常に気を付けていることやこれだけは!というこだわりなどを教えてください。

本郷さん:やはり、こういった外国人向けのものを制作するにあたって、クライアントさんが最初に言う事として、「自分たちはあまり分からないんです」というのを前置きとして言われるんですけど。でもその中でもクライアントさんたちはこうしたいという部分がでてきます。それが、果たして正解なのか?それを採用することが本来伝えるべき相手である外国人に伝わるのかどうか?というところをしっかりと調整しないといけないと思うんですね。

プロモーションなどにおいて、インバウンド業界に限ったことではないと思いますが、クライアントさんの言いなりになって進めてしまうことが残念ながら多いかと思います。ただ、私たちは情報の発信元でもあるし受け手(外国人)でもあるので、できるだけ本当に届けるべき相手に対してその方法が正解なのか問い続けながら仕事をしていますし、クライアントさんにもそこは説明をしっかりしながら進めています。

カイトマウリ:そうですね。目的がブレないようにというところですよね。それは本当に大事ですよね。

本郷さん:やはり、この仕事をしていて一番悔しいのって、そういった事業のお金は自分たちの税金から出していることなので。それで目的が果たせないようなプロモーションやクリエイティブを制作することはちょっと違うなと思います。

以前、ある自治体の外国人向けの広報誌の制作に携わった際に、正しい内容に校閲してもそういった部分も理解してもらえずに間違ったまま出版することがありました。その担当者の方は「自分の役所内の立場もあるし、どうせ誰も読まないのでこれでいいんです」って。あれは本当に衝撃でした。

そういう経験をして、だれのために、何の目的でお金を使っているのかという事を考えて進めていかないと、結局意味のないものを制作することになってしまうとは感じています。

カイトマウリ:確かに、本当に残念ですよね。それはなかなか苦しい気持ちになりますよね。目的や軸がブレないように全集中して制作や企画に関わっていくというこだわりをもつことは本当に大事なことですよね。

本郷さん:そうですね。

コロナ禍での起業と想い

カイトマウリ:そんな信念を持ったしいたけクリエイティブさんですが、なぜにこのコロナ禍に創業したのですか?

本郷さん:そうですね。自分たちのキャリア的にもちょうど良かったというのもあるんですけど、今が変化の時かなと思いました。一旦これで、インバウンドブームがリセットされて過去5年間を顧みる時間というのが、このタイミングなんじゃないかなと思ったので。本質的に変えるなら今しかないかなと思って、このタイミングでしたね。

カイトマウリ:このコロナ禍で、業務的に実際の状況はいかがですか?

本郷さん:業務的にはなかなか案件というのは少ないですね。企業向けには無いですし。過去にお手伝いしていた関係のお仕事がほとんどですね。それ以外だと自治体になりますが、それでもインバウンドは削減されているのでなかなか厳しいですね。ですから、自社の新しい商品をつくらなきゃいけないねという話はしていますね。

カイトマウリ:クリエイティブだけではなく発信する「何かを」ということですか。

本郷さん:そうですね。

カイトマウリ:変化したりする時というのはやはり色々大変なこともあるかと思いますが、それでもこういった状況をあえて選択して創業するというのは、本郷さんご自身の強い想いが勝ったということですね。

本郷さん:そうですね。でもやっぱりタイミングとして良かったなと思うのは、ここにきてコロナで色々あぶり出されたものがたくさんあると思っていて。それも例えば海外でいうとブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter:人種差別抗議運動)、日本でもLGBTQの法案の話など最近も活性化してきて、それもやはり皆がコロナ禍で色々考える時間があったというか、変えなきゃいけないという色々な想いがでてきたからだと思うんですけど。そういった意味では、自分たちが達成したいことはダイバーシティの推進だと思っているので良かったかなと思っています。

カイトマウリ:創業から半年ほどですが、創業までの苦労であったり、創業してからの課題であったり、どのように向き合って解決していこうなどはありますか?

本郷さん:創業にあたっては、私は日本人ですし私とアリーは結婚していますし、彼女は元々永住権を持っているので問題ないのですが、デイビッドはビザの関係があるので少しセンシティブに進めていましたね。

創業してからの課題としては、私たちがやりたいのは従来のプロモーションの仕方やクライアントさんが持っている課題を解決したい、変化をもたらしたいという意味合いで創業をしています。自治体とかは、我々の想いに同意してくれるというか、そうですよね~と仰ってくれるのですが、それでも実績が・・・とか大きな会社の方が・・・とか、という部分がありますね。なかなか根本的な変化というのを起こすのは難しいと感じているところですね。

そういった面で解決方法としては今後、地域の方たちと一緒に地道に活動をしていって、中長期的に本質的な変化を起こせるようにしたいと考えています。

コロナ禍での自身の変化

カイトマウリ:なるほど。日本を含め世界的に良い時期や機会であるということですね。
このコロナ禍で、本郷さんご自身の中で、精神的な部分や社会的な部分も含めて変化はありましたか?

本郷さん:いろんな人が苦しんでいるというか、国内でも海外でもそうだと思うのですが、苦しみの声のようなものがコロナ禍で発信しやすくなったのだと思うんですけど。ツイッターでもなんでも結構そういった動きが以前以上に活発になっていると思っていて、じゃあ、そういった人たちや、これから社会を変えていこうと思っている人達に対して自分が得意な分野でもいろいろ情報発信する立場としてやらなきゃいけないなというか、自分が声を上げることが全体のためのメリットになるのかもしれないなと思い始めたところもあって。そういったところで自身でもブログ発信を始めたり、ちょっとずつ前より変わってきたりしているのかなと思いますね。

本当に自分が一番大切なものって何かな?とか大切にしていきたいことって何かな?って考えたときに、自分の生き方もそうですし、仕事にもそれが反映すると思うので、ありがたいことにそれが直接的にできる仕事をしているのでそこをしっかりやっていこうと、仕事の軸にそれをもっていこうと考えています。

ダイバーシティを考える取り組み

カイトマウリ:そして社会にそのまま貢献していこうということですね。今、そういった反映や社会貢献ということで、新しい事業として現在取り組まれているJAPAN TRAVEL AWARDS(以下「JTA」という)について教えていただけますか?

本郷さん:はい。JTAと言っているくらいなのでアワード事業ではあるんですが、日本のこれまでの観光プロモーションは表面的な観光地を紹介するとかそういった部分が大きかったと思うのですが、今回の取組ではそれだけでは無くて感動だったりダイバーシティだったりそういったところに焦点を当てて観光を盛り上げていく。その盛り上がりは国内や身内で盛り上がって終わりではなくて、やはり海外にいる人や日本に来ようと思っている人たちに対して直結させる取り組みが必要だと思っています。その過程として、記事や動画コンテンツを作ってウェブサイトに掲載するというのもあるのですが、さらに、ブランディングに適している本を制作し、その本を海外で販売するというのが目玉のプロモーションです。

価格は税込み270万円と表記していますが、この価格に関してはこのくらいの価値があるよと打ち出したかっただけなので、実際は現地を訪れて審査する実費をご負担いただく形で進めています。また、クラウドファンディングなども行って、事業に賛同してくれる個人や企業にもぜひ参加してほしいと思っています。

JTA、地域の取組、例えばLGBTQのコミュニティに対して行政ではこういう取り組みをやっていますよとか、アクセシビリティやバリアフリーに対して行政や地域としてどんな取り組みをしているのかなど、そういった部分を吸い上げてそこをしっかり評価する、それがある意味コンテンツになると思います。観光地ってきれいだよという表面的なことだけではなくて、もう少しソフトの部分とかその中にいる人たちの考え方や想いをしっかり表面化させて観光に役立てていくというのを一連の流れでできないかなと思っています。

カイトマウリ:なるほど。観光地の見えるところではなくて、なかなか見えないハートの部分など、今までのプロモーションでは見えていない部分ですよね。それをカタチにして、世界に伝えるということですね。

本郷さん:はい。

カイトマウリ:確かに、わかってはいるんだけれどもそういったことを直接響かせる方法ってなんだろうと考えたときに今まではそういったアワードはあまり無かったですよね。

本郷さん:そうですね。はい。特に、LGBTQに関して、日本は本当に遅れているというか、最近の理解増進法案のニュースもそうですけど、全然情報や認知が無いレベルなので。ただ、海外で言ったら、ピンクダラー(pink dollar)と言われていますが、LGBTQコミュニティ向けのマーケティングはすごくお金になるという認識が出来ています。ターゲットもわかりやすいですし、その人たちが求めているものを明確にして取り組みやすい。バリアフリーって設備投資などある程度必要になると思うのですが、特にLGBTQに関してはお金も何もかかりません。それもあってか海外では取り組みは徐々に増えてきているので、日本でもそういった視点で進めていくと地域の活性化に繋がると思います。ダイバーシティっていうと難しく聞こえてしまうかもしれないですけど、実際は何も難しいことはありませんし、それがビジネスとして十分成り立つんですよって見せ方をしてあげれば、地域が輝くチャンスというか、他のところに勝つチャンスは一気に増えるのかなと思っているので、そういったところに焦点を当てていきたいなと思っています。

カイトマウリ:なるほど、そうなんですね。仰る通り日本はLGBTQについてはまだまだ遅れていますよね。男女という部分でさえも難しく、いまだ遅れをとっている状況下にありますよね。
皆、違いはあれど、同じ“人間”ですから、そんなに難しくとらえる必要はないとは思うんですけどね。

本郷さん:私たちがこういう取り組みをする中で、やはり伝えていきたいのは、仰っていただいた通り、外国人という枠組みに対しても同じで、例えば、〇〇人だから何が好きとかあるじゃないですか。

ただ、中国のTIKTOKだって、あれが中国のアプリだと知らなかった人もたくさんいるし、アメリカでもあれがアメリカのものだと思って使っていたという人だっているし。デザインという観点やコンテンツの見せ方という観点で言っても国ごとにそんなに違うかというと、それはあまりないと思います。日本でもFacebookをみんな使っていたりするわけなので。なので、インバウンドという形ではなくて、ダイバーシティという枠組みで観光を盛り上がりたいなとは思います。

カイトマウリ:国ベースではなくて、“ダイバーシティ”という視点で捉える。そういったお考えというのは実際に本郷さんご自身が感じたりした経緯があったということでしょうか?

本郷さん:もともとインバウンドというところで仕事はしてきていますが、実は「インバウンド」という言葉があまり好きでは無くて、ちょっと差別的ではないんですが見え方が、インバウンドと言ったときに単純に外国人を「お金」だと思っている印象がすごく強くて。

それってやはりインバウンド業界に携わっている人がそうだったり、自治体がそうだったりというイメージがどうしてもあって、それは変えていかなくてはならないなとずっと思っていて。

今まで一緒に働いている仲間はだいたい外国人ですが、皆嫌な思いをしているという話を聞いているので、それを変えていかないと、「何がおもてなしだよ!」という感じになってしまう。

カイトマウリ:JTAはそういった本郷さんの感じたことや外国人の仲間の感じたことなどを基調とされていて、多様性をそれぞれジャンル分けし、それらをアワード化することによって、認識してほしいという期待やビジョンもあるということですね。

本郷さん:そうですね。そして、そのアワードに参加する中で皆さん調べると思うんですよ。例えば、LGBTQフレンドリーの場所ってありますか?ってどこかの自治体に聞いたとしても、自分が対象じゃなかったら多分知らないと思うんですよ。ただこの取り組みを通して初めて、自分の地域にはこういう場所があって、こういう人が活躍しているんだっていうのが表にでてくる。

アクセシビリティに関してもそうですけど、一見、福祉!と思ってしまうかもしれないけど、難しいし、お金もかかるし、高齢者もそんなにいないしとか、車いすの外国人ってどれくらいいるんですか?という話になってしまうんですけど、実際アクセシビリティを整備すれば、海外からくる車いすの人たちだけじゃなくて、日本国内の障がいを持った人、お年寄り、ベビーカー、それに荷物をたくさん運ぶ配達の人とか全ての人にメリットがあると思うんです。そういうことを認識したうえでしっかり観光事業しようよと思いますね。

カイトマウリ:そうですね。日本は、LGBTQやアクセシビリティなどについて整備することを難しくとらえがちなのかもしれませんね。

本郷さん:簡単なんですけどね(笑)。
クリエイティブディレクターのデイビッドがゲイなので、LGBTQツーリズムといったら、何をすればいいと思う?と聞いたら、唯一でてきたのが、「ゲイだっていうのをわざわざ言う必要もないし、思われても変な空気にならないこと」というすごく抽象的な回答でした。

ホテルや旅館に行ったときに一緒の部屋を予約しているのにわざわざ部屋をわけたり、一緒の部屋でいいですか?と確認したりとか。わざわざ説明する必要があるというのが現状のようです。なので、LGBTQフレンドリーのルールを決めるというよりは認識を広めるという方法でしかないのかなと。

昔は攻撃の対象にされやすかったため、海外のいろいろな場所では1960~70年代にかけコミュニティが集まって生活するようになって、今やっとゲイの街としてポジティブな印象がもたれるようになりました。宗教的な部分が大きいと思うので、日本は表立って攻撃するような人はあまりいないと思うのですが、逆に存在しないような形に見せてしまっているというところもあると思うので、すごく難しいですね。

カイトマウリ:LGBTQ側の方もそれぞれ考えがあるかと思うのでどれが絶対正解というのはなかなか難しいとは思うのですが、知らない事も当事者ではないことでも、もう少し日本社会もジブンゴトとして認識してほしいですよね。

本郷さん:そうですね。

インバウンド業界への期待と希望

カイトマウリ:今後のインバウンド業界に期待することはありますか?

本郷さん:そうですね、ここ5~6年で皆、色々インバウンドに関してトライアンドエラーが繰り返されてきたと思います。何がうまくいかなかったかとか考える良い機会に今なっていると思うのですが、それをこれから新しくしていく、例えばダイバーシティというのもあると思うんですけど、インバウンドをいうのをひとくくりにして別物で考えるというよりは、社会としてやるべきことをやるだけですよというのを我々インバウンドに携わっている人間が発信していく必要があると思っています。私たちがこの仕事をしているのって海外をフックにすると日本社会が変わるスピードが早まるからです。例えば、LGBTQコミュニティのために〇〇しようっていうと日本社会は動かないかもしれませんが、海外にもLGBTQコミュニティがあるし、ビジネスとしてマネタイズできるので観光の分野から日本でもやりましょうというのが日本で実効性のある進め方だと思います。なので、新しい取り組みを日本国内でどんどんやっていくことをインバウンド業界から進めていきたいなと思っています。

海外のものがフックになって結果として日本に住んでいる人たちにとってもメリットがあると思うので。外国人とかインバウンドとかフックにして日本を変えていく。自分たちは本当にそれをやりたいと思っているし、周りのインバウンド関係者にもそうしてもらいたいと思っています。

カイトマウリ:なるほどそうですね。その流れを作っていきたいですね。

座右の銘

カイトマウリ:最後になりますが、本郷さんのビジネスにおける座右の銘を教えて下さい。

本郷さん:座右の銘というちゃんとした感じではないんですけど。

カイトマウリ:大事にしている言葉や大切にしている言葉で良いですよ。

本郷さん:はい。一番大事にしているのが「意味のある仕事をする」です。
先ほどの話と繋がるんですが、結局なんのためにやってんのという曖昧なままで表面的なものを作っても、意味は無いですし、誰のためにもならないですし、お金を出している人のためにもならないですし。それを受けとる消費者のためにもならないので。

“消費者のため”と目的を決めたらそれに向かってやっていく。そういった意味で、「意味のある仕事をする」というのを自分の中で思って仕事に取り組んでいます。

世界は大きいといいますが、逆に小さいと私は思っていて、自分たちが考えたビジョンで「世界を大きくして、小さくする」があります。やはり世界って広いのでいろんな人がいるしいろんなものがあるっていうのはあるんですけど、世界を広く知ることで、「なんだ。そんなもんか。人それぞれだよね。」って結局終わってしまうと思います。

世界を知ると、別にどこの国の人だからとか考えが無くなって。どんどん逆に世界が狭くなってくると思います。

自分たちの仕事や取り組みを通じて、日本人の世界を大きくして、小さくしていきたいです。

 

株式会社しいたけクリエイティブ
https://www.shiitakecreative.jp/

JAPAN TRAVEL AWARDS 2021年/2022年エントリー受付中
https://japantravelawards.com/

 

編集後記

コロナ禍である状況をプラスのスパイスとして捉え創業。
「海外向けというところは自分たちが提供できる価値でありそのためには勿論のこと、日本から海外への輸出やビジネスの展開などにも今後力を入れていきたい!世界とのコミュニケーションをやっていきたい!」とビジョンを語った本郷さん。終始力強さと誠実な想いが詰まった言葉が印象的でした。

また、リアルな外国人の声やクリエイティブへの熱い想い、そして、世界中がコロナ禍である今だからこそ日本の変化が必要であるという課題を見据え進めている新事業のJTAについても非常に共感を覚え、期待が高まります!

外国人に限らずコミュニケーションとは表面的な部分だけではなく、ダイバーシティを通じてお互いを認識することがより良い世界になるためのコミュニケーションであることを感じました。そしてインバウンド業界に対する期待にも頷きが止まりませんでした。

いつの時代も“意味のある仕事をする”ことで得られる悦びとやりがいは言葉にできないほどの価値を世界中にもたらすはずだと信じたい。
(取材/文/写真)カイトマウリ

ABOUT ME
カイトマウリ
航空会社勤務の後旅行会社などを経て現在のJOINT ONEにてライターを行う傍ら、インバウンド(訪日外国人旅行)に関わる広告代理業務及びFAMツアー時のアテンダー、旅程管理、コーディネーター、一般インバウンドツアーガイドを兼務。 また、インバウンドONE(jointone.biz)のFacebookページ(https://www.facebook.com/jointone.net)では、毎週選りすぐりのインバウンド観光関連ニュースやその他、関連ニュースなどに週イチでFACEBOOK限定で独自の一言コラムを執筆。