今回【エの輪】の特集「業界インタビュー」第1回目のゲストとして快くインタビューに応じてくださいました、株式会社C&Rトラベル-“Luxury Travel Japan”-の代表取締役能津万理さん。主にインバウンドにおいてBtoBのランドオペレーター業務とBtoCの旅行商品販売をおこなっている。コロナ禍において、事業の現状から未来に向けてへの取り組み、そして心境の変化など語ってくださいました。
インタビューアー:カイトマウリ
コロナ禍での変化
カイトマウリ:御社のメイン事業はBtoCとBtoBのインバウンド旅行業だと思いますが、コロナの影響で大きく変わったことや大変なことなどはありますか?
能津さん:もちろんインバウンド旅行を取扱っているので仕事の影響は受けています。でも、大きく変わった事は、自分自身の意識が大きく変わりました。
カイトマウリ:自分自身の意識ですか。
能津さん:はい。ちょうど今7年目なのですが、事業自体を振り返る大きな機会になりました。コロナ禍になってから1年経ちましたが、正直、コロナ自体は1年くらいでどうにかなるのでは?と思っていたのであまり大きな行動を起こしてはいませんでしたが、そんな中でも何かやれることはないかなという気持ちはずっとありました。
ですから、コロナの終息後にすぐに仕事が再開できるように、また、お客様に覚えていてもらうために、月に一度のニュースレターの発信などを継続して行ったり、WEBサイトも新しくしたりしました。
また、外国の同業の友人と話す機会があった際に、現地の状況を聞いたのですが、しばらく海外旅行はわからないから他のマーケットも視野に入れたほうが良いというアドバイスを受け、今までのインバウンドマーケットだけではなく、国内のマーケットにも意識を向けるようになりました。
カイトマウリ:積極的な意識が湧いてきたのですね。
能津さん:はい、そうですね。
カイトマウリ:コロナ前に印象に残っていることはありますか?
能津さん:コロナ禍でずっと計画が延期になっているお客様のことですかね。個人のお客様でコロナ前の2019年からずっとやりとりをしているお客様で2020年のツアーに向けての計画だったのですが・・。
(お客様の)彼らはアメリカ人なのですが、もう既にワクチンの接種を2回完了していて、アメリカはワクチンの接種完了が進んでいるんだけれど、日本はどうだい?という感じです。
カイトマウリ:なるほど、生(なま)の声ですね。
カイトマウリ:このコロナ禍において、クライアントさんの現状はどうですか?先ほどの同業のお友達の話にもあったと思うのですが。
能津さん:アメリカは、ほぼほぼ平常業務しているようです。勿論、アメリカとヨーロッパの状況は違うと思いますが。
カイトマウリ:能津さんの業務においてはどうですか?
能津さん:日本はやはり訪日ができないので、近々では特にないですね。2年後のツアーの話をしています。ですから、2023年の春頃からの予約が入ってきている状況です。ヨーロッパの旅行業は大変そうです。
カイトマウリ:今、一番不安なことはありますか?
能津さん:いつになったらちゃんと旅行が再開できるのだろうという不安も、もちろんありますが、やはり資金繰りですかね。今のところは大丈夫だとしても、新規事業に対しても資金は必要ですからね。資金は血液ですからね。
カイトマウリ:そうですね。
事業と自身の成長と社会問題への関わり方
カイトマウリ:コロナ禍において事業を含め能津さんにプラスになったことはありますか?先ほどの積極的な意識が・・というのもあると思うのですが。
能津さん:はい、ありましたね。全体的に積極的な意識になりました。それがあってか、すぐに売上には結びつくというわけではありませんが、やはり国内にも目を向けたことで、視野も広がりました。
カイトマウリ:なるほど。
能津さん:それから、本当にこのままで良いのかな?と、事業以外の面でも、自分の人生においてもですよね。
私は小さい規模で起業して大きくしていきたいと思っていましたが、やっぱり女性っていうのもあるのかな?やはり始めるのは簡単なんだけど、大きくしていくのが難しくて、ある程度レバレッジかけないとですよね。だから、私は無理に大きくしなくても良いんじゃないか?このままでいいかなと思っていました。でも、コロナ禍においてすごく意識が変わりました。もっと自分頑張っていかなきゃって思いました。今、私ができることって何だろう?って。
頑張って日本を引っ張ってくださる女性もたくさんいて、“女性として頑張ろう!”というビジョンを見せてくれるじゃないですか。だから私も働く女性の一人として、私が代表してという気持ちではないけれど、多少無理をしてでも後に続く女性を引っ張っていくうちの一人になれればと。起業したのだから、やるからにはやろう!と考えるようになりました。
そうすることによって、女性に対しての社会的立場のネガティブな面をポジティブに変えていければ良いと。それが、私たち女性起業家の目指すべきところなのではと思いました。
ですから、コロナの影響でプラスになったことというのは、立ち止まったことによって、いろいろ考えることができたので意識の変化があったことですね。
カイトマウリ:景色が変わったという事ですね。通常業務があまり動かない状況によって時間が持てたことで、普段考えられなかったことにも意識が広がり、結果、自分自身の人生や事業にも前向きになられたのですね。
能津さん:そうですね。そういうことですね。
カイトマウリ:今、取り組んでいることはありますか?先ほど挙げられた友人の方からのアドバイスによって国内マーケットにも視野を広げたということでしたが。
能津さん:はい、国内マーケットへ積極的に取り組んでいくために、新しい事業も計画中です。実はずっと何年も温めていたことではあったのですが、このコロナ禍によって国内で職を失っている優秀な旅行の有資格者達が多いと思うのでそういう方々と一緒に仕事ができないか考えています。
カイトマウリ:なるほど、お互いに助け合い、支え合い発展するビジネスモデルになりそうですね。
人材のダイバーシティは情熱があってこそ
カイトマウリ:御社のウェブサイトを拝見したのですが、ブログも積極的に更新されていますよね。また、会社概要に他社さんOTA(オンライントラベルエージェント)アンケート調査で「旅行によって感じる幸せの方が、カタチに残るものから得られる幸せよりも心に残る」という結果から、能津さんは、「旅は幸せをもたらす大切なイベントであり、今後は人材のダイバーシティ(多様性)が重要になり顧客に寄り添って仕事ができる人材が必要」ということを仰っておりましたが、そのあたりについてはどのようにお考えですか?
能津さん:一生の思い出になる旅の為に、お客様の満足度を重視しなければ最終的にリピーターもつきませんし、業務する側も仕事に価値ややりがいを見いだせないのではないかと、仕事がつまらないのではないかと思います。そういう意味では、長く続けるという意味では難しいですよね。旅行を売るということはパッと儲けて終わりというそんな単純なものではない。情熱がないと続かないのではと思います。なんでもそうですが、何かやろうと思ったら労力もいるしお金もかかるけれど、本当に必要なものはパッションだから、情熱がなければ続きませんよね。やっぱり。
カイトマウリ:そうですね。情熱ですね。大事ですよね。情熱!能津さんの“旅行”に対する熱い想いがウェブサイトに表現されていて心にジーンときました。まさに情熱ですね。
能津さん:ありがとうございます。
発信の重要性を痛感
カイトマウリ:YouTubeチャンネルを開設されたようですが、これはコロナ禍に入ってから公開されていますよね?
能津さん:そうですね。
カイトマウリ:これも新しい取り組みですよね。仕上がりも本格的ですね。
能津さん:そうですね。ありがとうございます。まだたくさんは配信できていませんが、積極的な意識からコロナ禍に訪日できないお客様に発信したいと思い取り組んだことのひとつですね。その取り組みを通じて、やはり発信力って大切だなってすごく思いました。言葉選びや写真、映像とか。私たちは夢を売る商売ですから、どういう言葉で感動を与えるのか?とか、センスもそうですけど。そういう事をもっと磨いていかなければいけないなと思っています。発信した動画やブログを見て、日本へ行ってみようかなと思ってくれる方がいれば嬉しいから。
カイトマウリ:なるほど。夢を売る商売、そうですね。そういった積極的な発信などの取り組みをコロナ禍でもされている会社さんにお客様は心と心の繋がりを感じて、旅行をお願いしたいなと思うのでしょうね。
能津さん:そうですね。こういう人がこの旅行会社をやっているんだと思って、会ってみたいなとか思っていただけたら嬉しいですよね。こういう状況でも何かやっていかなきゃいけないですよね。怖がっていても仕方ないですし。
カイトマウリ:そうですね。
能津さん:今は“トライ&エラー”で本当にいろいろ挑戦したほうがいいですね。
カイトマウリ:“トライ&エラー”おっしゃる通りですね。
バンドと事業を架け橋に
カイトマウリ:少し話は変わりますが、三味線やお琴などの体験ツアーなどを行っている能津さんですが、三味線やお琴の教師もされているんですよね?
能津さん:はい、両方していますね。
カイトマウリ:それは、旅行業とは別にという感じですか?
能津さん:旅行業とも一緒の部分もあるのですが、別でもしていて、友人と「カノン」という名前でバンドを組んでいます。ライブやイベントも行いますが、英語や日本語でも活動しています。日本人でも三味線やお琴のことを知らない方も多く、お琴や三味線をされる方も本当に少なくて、その関係で職人さんも減ってきています。実際に三味線やお琴の業界はとても厳しい状況なので、歴史や伝統をもっと広げたいと思って活動しています。
カイトマウリ:若い人含めいろいろな方に三味線やお琴の事を知ってもらい挑戦してもらい活性化されると良いですね。
能津さん:そうですね。そのためのワークショップを行っています。実際に触れてもらい、弾いてもらって最後に「桜」を弾いて終了という感じで楽しんでもらっています。
カイトマウリ:そうなんですね、それは実際に収入源にもなるということですか?
能津さん:はい。そうですね。
ロケーションも雰囲気の良い場所で行ったり、富裕層の方にも楽しんで頂いたりしています。もちろん一般的なレンタルスペースでも人数を集めて行っています。
カイトマウリ:それは、都内だけでなく各地でもされるのですか?
能津さん:そうですね。現状はそんなに遠くまでは行っていませんが、要望があれば行かせていただきます。(笑)
カイトマウリ:(笑)なるほど、そうなんですね。日本の素敵なロケーションで多くの方に楽しんで頂きたいですね。
業界への期待
カイトマウリ:コロナ終息後、事業で一番やりたいことや業界に対して期待していることはありますか?
能津さん:インバウンドだけでなく、国内マーケットにも目を向け始めたので、やはりアウトバウンドをやっていきたいですね。
カイトマウリ:アウトバウンドで更に旅行業務の幅が広がりますね。
能津さん:はい。期待していることは、平等に仕事ができる業界であってほしいということですかね。
カイトマウリ:なるほど。今はコロナの影響で業界がある意味リセットされたような状態だと思うので皆が同じスタートラインに立ち、コロナ終息後は同時に平等なリスタートになると良いですね。
座右の銘
カイトマウリ:最後になりますが、ビジネスにおける能津さんが大切にしている座右の銘を教えてくれますか?
能津さん:好きな言葉でもいいですか?
カイトマウリ:はい、もちろんです。どうぞ!
能津さん:“道は開ける“かな。「開(ひらく)」という言葉が好きですね。何があっても道は開けるから絶対に!それは信じてるし、そう思っています。行き止まりであっても何か絶対に道は開けるからあきらめないこと。諦めなければ絶対に道は開ける!
株式会社C&Rトラベル-“Luxury Travel Japan”-
https://luxury-travel-japan.com/
編集後記
終始、笑顔がとても素敵でふんわりとした優しい雰囲気の中、インタビューが進んでいきました。主にインバウンド旅行を営む能津さんですが、このコロナ禍をきっかけにアウトバウンドへも事業を広げていく事を決意。また、コロナ禍において失業された同じ業界人を想った新事業を考えるほか、自社にて新たに旅行に関する発信をスタートしたりするなど、以前からされている取り組みにプラスして様々な事に前向きに積極的に且つパワフルに取り組んでおられ、非常に刺激的な時間でした。
女性経営者という立場からも、現在の日本社会においての女性の地位問題などに対しても前向きにもっと取り組んでいきたいというお考えに力強さとやさしさが共に溢れており、強い共感を覚えました。新事業の発展も楽しみです。
このコロナ禍、まさに受け身の姿勢ではなく、自ら景色を変えていきたい!
絶対に“道は開ける”あきらめずに進みたい。
(取材/文/写真)カイトマウリ