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農泊の魅力発信「SAVOR JAPAN」 新たに4地域を認定 農水省

ニュースDEコラム20201224

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農林水産省は、インバウンド需要を農山漁村に呼び込むための仕組みとして創設した「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」に今年度は4地域を認定した。認定証授与式は、12月11日に農林水産省で行われる。

「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」は、農泊を推進する地域の中から、特に食と食文化によるインバウンド誘致を図っている地域の取り組みを農林水産大臣が認定。その地域の食の魅力を「SAVOR JAPAN」ブランドとして海外に向けてPRすることで、増加するインバウンド需要を農山漁村に呼び込もうとするもの。6月から7月にかけて取組計画の募集を行った。
認定地域は、観光庁との協議や、「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」の有識者会議委員からの助言を経て選定。農林水産大臣から国土交通大臣へ意見照会を行った上で、特に優れた取り組みとして4地域が認められた。

令和元年度の認定地域は以下の通り。

▽大田原市(栃木県) 大田原グリーン・ツーリズム推進協議会
明治時代に開拓された那須連山を望む「那須野が原」は、米を中心に多様な食材が生産され、その中で農家の知恵として、しもつかれ等の郷土料理が作られてきた。同地域では、昔ながらの農作業や鮎漁などのグリーン・ツーリズムを推進。農家との交流を通じて日本の生活を感じる旅を提供する。

▽大井川地域(静岡県) 大井川農泊推進協議会
南アルプスを源流とする大井川の水は牧之原台地を潤し、広大な茶園景観を形成。域内ではそれぞれ特色あるお茶が生産され、茶摘みや絶景茶園を臨みながらお茶を味わう体験やお茶の飲み比べ、高品質な日本茶を作るブレンドや茶箱を作る工芸体験など茶産地ならではの体験を提供する。駿河湾の豊富な水産物も魅力の一つ。

▽大紀町(三重県) (一社)大紀町地域活性化協議会
日本書紀に「美し国」と記され、伊勢神宮と熊野三山をつなぐ「熊野古道伊勢路」を有する地域。松阪牛の中でも希少な特産松阪牛を生産しており、高品質な松阪牛を農家民宿で食べられる体験等を提供している。また、1000年も続く鮎で豊漁を占う神事があり、歴史ある鮎の食文化を発信。

▽国東半島地域(大分県) (一社)豊の国千年ロマン観光圏
日本を代表する温泉地「別府」や、神仏習合の発祥と言われる「宇佐神宮」の影響を受けた六郷満山文化、世界農業遺産など、地域資源が豊富な地域。宇佐神宮の幻の神事「行幸会」を活用したプログラムや峯道ロングトレイル、農村景観、だんご汁などの郷土料理、温泉などを掛け合わせた滞在交流型旅行を推進している。

出典:農業協同組合新聞 2020年12月10日https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2020/12/201210-48227.php

 

コラム

今回認定された4地域の内容はどれも地域特有の歴史や根付いた文化が豊富で非常に興味深いものがあります。今では、農泊でインバウンド需要の取組をされている地域さんは徐々に増えつつあります。そんな農泊によってどういったメリットが農家側に生まれるのか、また観光業にプラスになるのかを考えます。

農泊とは

農場や農村で休暇・余暇を過ごすこと。農山漁村滞在型旅行、アグリツーリズム(アグリカルチャーツーリズム)またはグリーンツーリズムやファームステイとも呼ばれ、日本人が外国に農泊するケースでいうと主に英語を学ぶことを目的としニュージーランドやオーストラリアにファームステイをするというスタイルが多く知られています。自然を舞台とした生産業を主に行っている地域が対象とされています。

農泊願望を引き出す 日帰りアグリツーリズム

最近、筆者はとある県のアグリカルチャーを取材の関係で同行しましたが、都心から近く日帰りでも農業体験やネイチャー体験ができる魅力的な場所でした。取材記者の外国人は非常に興味深く各所での体験を楽しみ、その土地の農産物で作られたお菓子や料理などを驚きながらも食し、また苦手だったという日本の伝統的な食品もこの体験をきっかけにファンになったとのこと。宿泊はなかったため農泊ではありませんでしたが、1日で様々な農業体験を学び、感動や自己発見、自己成長へと繋がる結果となりました。次回は宿泊を絡めもっとのんびり過ごしたいという新たな関心へと発展していきました。

まとめ

農泊はその土地だからこそ誇れる農業のかたちと伝統的な農業方法や農産物と観光コンテンツを追求し、この食材はなぜここで良質な味わいで食すことができるのか、物産はなぜここで生産されるのかというストーリー性を持たせ、歴史的な面や風土など奥深い理由とともに理解が深まることで、その土地への親しみが沸き、地域全体への関心や興味などが膨らみます。するとその土地の周囲の観光資源やその他の伝統や習慣などへの好奇心へと繋げることができます。体験した事は帰国後も周囲に語られ、SNSなどの記録に残ることもあり得ます。また、主催側は消費者の正直な声をきくチャンスにもなりお互いに良い刺激となります。農泊やアグリカルチャーツーリズムを主催検討の際は、まずは体験版として半日から始め、体験者の意見を参考に丸1日、2日、3日、1週間、1ヵ月といった形でプログラムを小さな芽を育てるかのように大切に徐々に変化させていくと良いと思います。

日本にはまだまだ日本人さえ知らない誇り高き伝統や技術が多く存在しています。インバウンド向けだけではなく、垣根無く全ての人が楽しみ学ぶことで後世に伝わり続ける農泊のスタイルが生まれるとますます観光業の未来も明るいのではないでしょうか。

ABOUT ME
カイトマウリ
航空会社勤務の後旅行会社などを経て現在のJOINT ONEにてライターを行う傍ら、インバウンド(訪日外国人旅行)に関わる広告代理業務及びFAMツアー時のアテンダー、旅程管理、コーディネーター、一般インバウンドツアーガイドを兼務。 また、インバウンドONE(jointone.biz)のFacebookページ(https://www.facebook.com/jointone.net)では、毎週選りすぐりのインバウンド観光関連ニュースやその他、関連ニュースなどに週イチでFACEBOOK限定で独自の一言コラムを執筆。