MICEとは、Meeting、Incentive、ConferenceまたはConvention、ExhibitionまたはEventの4つの頭文字を合わせた造語ですが、会議や企業研修旅行、報酬旅行またはイベントや展示会などの団体旅行を旅行・観光業界では指すことが多いです。
コロナ禍ではご存知の通り通常の観光のみならず、MICE自体の動きもほとんどありませんでした。
勿論、旅行会社をはじめとする宿泊施設や観光施設、他付随ずる業界の方々は大きな打撃を負っております。しかし、今もなお続く不安定な状況に苛まれながらもアフターコロナのMICEについて前進しようとしています。
今回は先日、筆者が参加した某県のMICEセミナーを基に昨年のコロナ禍や現状、そして今後のMICEについて考察していきたいと思います。
世界のMICE開催、2020年と現在
2020年は新型コロナウイルスの影響が大きく、ICCAの国際会議やイベント開催についてのレポートによると、8,409件のイベントに対し44%が延期、ハイブリッド(オンラインとリアルでの開催)が2%、中止が14%、開催場所の変更が1%、ヴァーチャル(オンライン)が30%、影響なしで催行が9%でした。
参照:https://www.iccaworld.org/cnt/Research/ICCA%20Statistics%20Study%202020_270521_Final.pdf
時期や開催国によってそれぞれ影響が異なることもありますが、2020年は延期もしくはオンラインでの開催がメインであったことが分かります。
2021年の統計はまだ発表されていませんが、今年はワクチンの影響もあり国の政策や方向性によって少しずつ動き出していった結果が数値として見られるのではないでしょうか。
日本国内においては緊急事態宣言が続き、感染者の増加もあったせいか、オンラインをベースとしたものが増えつつも、後半に入り緊急事態宣言及びまん延防止措置の解除により、ハイブリッドといったリアルとヴァーチャルの2WAYでの開催も増加したのではないかと予測します。
ちなみに、先日参加したセミナーはハイブリッドでの開催で、筆者は実際にリアル参加をしましたが、オンライン視聴参加者~会議室(リアル参加者及び登壇者)~観光地(現場からレポート)の3か所をライブで繋ぎ行われたもので非常に立体感のあるセミナーでした。
オンライン視聴者やリアル参加者から同時に質問などを受け付けることが可能で、観光地とのやりとりもスムースでそれぞれの温度が伝わる、三位一体となってセミナーの成功が構築できたものでした。
アフターコロナに向けての施策や取り組みの現状
アフターコロナだけではなく、コロナ禍のリアルなMICE開催に向かって既に各自治体や観光関連事業は動き出しています。
例えば、
- MICEセミナーオンラインやハイブリッド開催
- 協会等を通じての資料配布
- 旅行会社がオンラインでいつでもダウンロードできる資料やお問い合わせシステムの導入
- 受入現地スタッフが紹介する現状や施設等の紹介動画
- 受入現地スタッフの体制や教育状況についてホームページにて紹介
- コロナ禍での受入体制について現地独自のチェック体制や検査パッケージなど衛生面での取り組みをホームページや資料または動画で紹介
- 旅行会社が現地で顧客をスムースにご案内できるスタディ動画
- 旅行会社が顧客に送付する資料をメール送付できる形式をオンラインで管理(会社名や顧客名をオンラインで入力してメールでそのまま送付できる)
など
MICEなどの専門コンテンツは特に顧客と最前線でやり取りを行う旅行会社が理解を深める必要性があります。特にMICEは団体となるため、アフターコロナとはいえソーシャルディスタンスや衛生管理状況などの確認や、受入地域と顧客のマッチングなどを慎重に考える大切な機会になります。こういった状況下でもセミナーやホームページ等で詳細が得られる機会があることは、コロナが収束(終息)する前から準備ができ、収束(終息)目途がたてばすぐに動き出すことができるので、旅行会社・各観光地・顧客の三方にメリットがあると言えます。
コロナ禍での変化そして未来
リアルに現地集合して身体的に力を合わせて取り組む必要が無い場合は、オンライン化の需要が増えた事実はあります。そして、それに伴うテクノロジーの発達も続いています。主催者側としては、常に先が見ない状況下で、オンラインでも可能なスタイルに移行をしていく体制を新たに築いた方々もいらっしゃると思います。また、最近では新たな変異株が見つかった新型コロナウイルスの影響もあり、ますますリアルとヴァーチャルどちらでも開催可能なスタイルを考えられるケースも増えてくるのではないでしょうか。
それと並行して、リアルでも安心安全にMICEの開催が可能な体制を懸命に整備している地域も少なくありません。
冒頭で挙げた通りMICEの”I”にあたる報奨旅行や企業研修旅行というテーマにおいては“旅”を抜きにしては考えられませんから、可能な限りリアルでの体験旅行というのが目指すところだと思います。
国がその動きを止めない限り、受入れ地域や施設の体制整備が引き続き重要だということです。
まとめ
各地域によって必要と考えられることを常に現地側がアップデートして積極的に発信し、事業者側からの提案を柔軟に受け止め、ブラッシュアップしている受入地域は旅行会社側にも顧客にも非常に心強く候補地としても提案しやすいというのが正直なところです。
フレキシブルに対応することであらゆる危険を避けることができるにも関わらず、変化を頑なに拒む状態では何もメリットは生まれません。
一般の旅行とは違う内容であることを前提に、新型コロナウイルスの影響で得た知識を活かし、変化を恐れず柔軟に広く対応していくことで新時代のMICEはより強くより活発になることでしょう。