2021年3月17日に行われた、【第2回】観光庁後援スノーリゾートフォーラム2021 ~ グリーンシーズン・コンテンツ造成に関するトークセッション~(無料オンラインセミナー)を拝見し、興味深いお話をされておりました。今後のスノーリゾート継続発展に対するヒントがありましたので、事例と共に「インバウンド客の影響大!?スノーリゾートの現状と今後の打開策」の第2弾コラムとして、第2回スノーリゾートサミット2021(無料オンラインセミナー)で紹介されたデータやお話を元に筆者の意見を加え考察していきたいと思います。
◇◆訪日外国人スキー・スノボー客の現状
訪日外国人旅行者の増加に伴い、外国人スキー・スノーボーダー客数も増加傾向で、2018年時点で推定88万人となりました。「JAPOW」とも称される世界でも有数の日本のパウダースノーが欧米豪を中心に人気があることに加え、2022年北京冬季五輪に向けて中国でスキー・スノーボーダーが増えていることなども後押しとなり、コロナ禍前までは増加傾向が継続している状況でした。
2018年の推定88万人の内、欧米豪約20%、アジア75%、その他5%という内訳です。数ではアジアが多いですが、滞在期間は短く消費単価は低いです。一方、長期滞在でリピーターになる可能性もあることから、消費単価については欧米豪が圧倒的に高い為、スキー場ごとの特徴を踏まえターゲット分析を行いながら、どのようなインバウンド客をメインターゲットとするか戦略を練る必要があります。
◇◆抱える課題
日本人スキー、スノボー人口の減少
スキー、スノボー人口の減少には2つの大きな原因があります。一つ目は、メインプレイヤーである若年層の人口減少、二つ目はスキー・スノボー参加率の減少です。どちらの数値も今後増加傾向にない為、全体として日本人のスキー、スノボー人口の減少傾向は続くものと思われます。
インフラの老朽化
リフトを中心としたスキー場設備の老朽化も今後の継続稼働を考える上で、大きな課題となっています。この問題はすべての課題に関連してきますが、現状の収益性と比べて過大な設備投資ニーズがあることが最大の課題となっているようです。その為、リフト券価格を上げる、また通年で安定的な収益を確保できるようにするなど、収益性を高め適切に設備投資を行っていくことができる経営環境にしていく必要があります。
通年の人材、安定的な収益確保
冬季シーズンに集客が集中するスキー場では、運営スタッフなど人材が必要な時期も冬季に集中します。夏季シーズンは当然スキー場は休業となり、ハインキング・トレッキングや自然と触れ合う目的で滞在する需要はあるものの、冬季スキーシーズンほどの集客がないスノーリゾートがほとんどとなります。その為、季節によって雇用する規模が変わる為、安定した人材及び収益の確保が難しいことも課題となります。
その他の課題
上記以外にも、温暖化による少雪傾向の悪化、インバウンド増加に伴うニーズの急激な変化(日本人客とのニーズの違い)などもスノーリゾートが抱える課題の一つであると言えます。
◇◆取り組み事例
抱える課題に対して、解決先の一つとなるのが、夏季(グリーン)シーズンの稼働率を上げることです。それにより、スキー・スノボー客だけに頼ることが無くなり、1年を通した収益の安定化、人材の確保が実現し、その結果、スキー場への設備、プロモーションなどへ投資が可能となり、冬季シーズンのサービス力が向上するという好循環が生まれます。
グリーンシーズンの取り組みについては、各スノーリゾートで様々な取り組みがされておりますが、その中でも先進的な長野県・白馬エリアの事例をご紹介します。
スノーピークランドステーション白馬
https://www.snowpeak.co.jp/landstation/hakuba/
アウトドアブランド「snow peak」と共同で開設した白馬観光の新たな拠点。snow peak国内最大規模の直営店や食を通じて白馬の魅力を知れるレストラン、キャンプ宿泊体験施設などがある複合施設。
ヤッホー!スウィング
北アルプス白馬三山を正面に望める立地に、雄大なアルプスに飛びこむような感覚を楽しめる絶景大型ブランコ。
国立公園内自然環境教育プログラム
“Mikketa!”
https://www.otari.work/challenge/mikketa/
国立公園に指定されている栂池自然園というフィールドを使い、自然を楽しみながら家族が全員一緒に自然を学べる「体験学習」プログラム。
IWATAKE GREEN PARK
https://iwatake-mountain-resort.com/green/greenpark
snow peakプロデュースの元、家族連れやペット連れなど様々なニーズに応えることができる大自然を活かしたリゾート空間。
白馬つがいけWOW!
フランス発祥の「エクストリーム・アベンチャーズ」を日本で初めて導入したアドベンチャーパーク。
“MTBの聖地”復活
https://www.cyclowired.jp/lifenews/node/251284
「MTBの聖地」復活に向けて2017年に白馬岩岳MTBパークを大拡充。その結果、2018年にはMTB関連で1万人が来場し、グリーンシーズン集客の成功事例の一つとなった。
◇◆まとめ
スキー場及びスノーリゾートが今後も継続発展して行く為には、グリーンシーズンのコンテンツを開発し、1年を通した安定的な集客を目指すことが重要です。特にコロナ禍において自粛が求められる現状で、思いっきり大自然とふれあいというニーズが今まで以上に増えることも予想されます。その為、冬季に集中したスノーリゾートから、山及びその周辺地域も巻き込んだ、通年稼働する総合マウンテンリゾートにグレードアップしていくことが大切ではないでしょうか。